落ち着いた静かな時間の流れの中に描かれる熱い人間ドラマ
米国の作家カズオ・イシグロが描いた作品を綾瀬はるか、三浦春馬、水川あさみを起用しテレビドラマ化。
このドラマは、クローンや臓器提供システムといった舞台設定があり、物語のジャンルとしてはSFを加えたヒューマンラブストーリー。
わたしを離さないで【TBSオンデマンド】
誰もが何かに悩みながら生きているという不変のテーマ
最も感動したのは、ドラマのタイトルにもなっている「わたしを離さないで」というセリフを酒井美和(水川あさみ)が保科恭子(綾瀬はるか)に泣きながら叫ぶシーンです。
自分たちのことを「天使」と呼ぶ大人たちに囲まれて育った幼少期から、やがて自分が臓器提供のためにつくられたクローンだと知る大人になるまで、美和は常に恭子を妬んだり蔑んだりしながら生きて来ました。
一見、ただの意地悪のように見えますが、これはふだん強がっている美和が、心の不安を隠すための行動だったことが徐々に分かって来ます。
そのことが、いよいよ死を目前にした美和が、今まで意地悪をして来た恭子に「わたしを離さないで!」と叫びながら感情を爆発させることで、はっきりと表現されています。
明日をも知れない不安な状況におかれたら誰だって気弱になる。
誰もが何かに悩みながら生きている現代を表現したシーンではないかと思います。
「わたしを離さないで」はこんな人に見てもらいたい作品
このドラマは序盤で主人公たちの幼少期の様子が数回にわたって描かれた後、大人になった現在へと舞台が変わります。
その後も、時々、過去の出来事を思い返す流れになると幼少期のシーンが描かれるのですが、過去を回想することで過ぎ去ってしまった時間の切なさが強く伝わって来ます。
スローでアコースティックな主題歌の流れる中で、そうしたノスタルジーな気分に浸るのが好きな人に見てもらいたい作品です。
また、このドラマは、クローンや臓器提供システムといった舞台設定があり、物語のジャンルとしてはSFの中に入ります。
しかし、主人公たちの幼少期における心の動き、過酷な運命のもとに子供たちを作り出してしまった大人たちの苦悩など人間ドラマも熱く深く描かれています。
SFは見てみたいけど難しい宇宙や物理の話は苦手という方には、SF作品への入門としてもおすすめできるドラマです。
「わたしを離さないで」があなたの心に残る理由とは?
『わたしを離さないで』の動画を、1話から最終回まで見逃し配信。動画配信サービスの無料お試しでドラマの見逃し配信を視聴。『わたしを離さないで』のあらすじ、出演者、感想。
「わたしを離さないで」最大の盛り上がりを見せるであろう第7話の後半。
友彦の元へ向かう車の中で、美和は恭子がコテージを出ていった後の事を伝えます。
恭子は新しくコテージに来た人と付き合い始めたこと。友彦も「ああ、そう」といった感じであっさり別れてしまったこと。
そこまで話すと美和が何か曲をかけてと言うのでラジオをかけると、偶然にも友彦からもらったCDの曲が流れます。
「わたしは、恭子を怒らせたかった。”本当の友達”になれると思ったから。最低、とかクズ、とか言ってほしかったの。うまくはいかなかったけれど。」正直な気持ちを語り始めた美和に対し、恭子も本音で応えます。
「ぶっ殺してやろうと思った……何度も、何度も。充分成功してるよ。」お互い目に涙を浮かべながらも、表情は笑っています。
これまでのストーリーで大きな壁となっていた、二人のわだかまりが解けた瞬間です。
自分の命が残り少ないことを悟って本音を語ることで、恭子とやっと”本当の友達”になれたのではないでしょうか。
生涯心に残る物語
この作品のテーマは、一言で言うと「人は何のために生きるのか」ということになるでしょう。
クローン人間である恭子たちは、様々な問題が立ちはだかる人生を、疑問を感じながらも必死に生きていきます。
しかし、彼女たちが抱えている問題は、彼女たちがクローン人間だからでしょうか?
自分が何のために生まれたのか、何のために生きるのか、そしてなぜ死ななければならないのか……。
突き詰めるとこうした問題は、実際に自分の人生を生きている私たちにも、共通していることではないでしょうか。
気が付けばあっという間に終わってしまう短い人生の中で、何を大切にして生きていくのか。
既に書いたように、美和は自分の命が残り少ないことを自覚することで、素直になることができました。
この作品は、自分の人生に意味を感じられない、やりたいことが見つからないと言った方にオススメです。
あなたの心に大切な問いを投げかけてくれるでしょう。
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